第3章

脱ステのススメ 14 第3章 〜続・本当に副作用はないに等しいのか?〜

ボアラ軟膏について

データを検証する

③『足りないデータはないか(隠されている資料に注意)』

これについては、はっきり言って、足りないものばかりですどの病院で、どのような症状の患者に対して、どれくらいの量を、どれくらいの期間使用し、どのような調査方法でデータを収集し、どの文献の結果を元に判明したデータであるのか、その全てが足りていない、あるいは故意に隠されているのです 

 

もう一つ、私が最初に懸念していたことが、インタビューフォームで明らかになりました。ボアラ軟膏の発売されたのは、1986年、今から30年以上も前です。インタビューフォームには、臨床データにある総投与症例9840例のうち8442例が、1986年から1992年の6年間に取られたデータで、副作用の発現症例率は0・34%とありますこれはもちろん6年間に渡って使用し続けた例が8442件なのではなく、カギ2の部分でのべた、短期間での症例データを合計したものでしょう。そうでなければ、6年間という期間で8500件にものぼる症例データを取ることはかなり難しいでしょうし(データを取る病院数が増えればそれも可能ですが、先に述べたとおりデータの信憑性がかなり薄くなる)そもそも6年間塗り続けても良くならないということを証明することにも繋がってしまいます

 

そして、わざわざ再調査結果を記載したということは、それ以前の結果が企業側にとってよろしくなかったのでは?という懸念でしたが、まさにその通り。承認時(1986年時点)での副作用発現症例率は2・58%、1398例中36例と、その後6年間の調査と比べ8倍近くも多くなっています 

 

そもそも、30年以上前に開発された薬が今尚現役で活躍していると言うことも大きな問題です。なぜなら、この事実はアトピーの治療薬が30年間進歩していないということになるからです。1986年と言えば、任天堂がファミリーコンピューターを発売したぐらいの頃です。スマートフォンはもちろんのこと、パソコン、携帯、アマゾンもグーグルもコンビニも当然ない時代です。世の中はこの30年でこれほど進化しているにも関わらず、アトピー治療薬、薬業界は止まっているのです。これは驚くべき事実です。しかし、この理由は企業側から見た新薬の開発期間の長さや、資金回収の観点から見ると当然の流れと取ることができ、それが成り立ってしまうところに、大きな構造的問題を感じます 

 

④『言っていることが違ってやしないか(問題のすり替えに注意)』

これは『私のような素人には判断できない』というところが本音です。基本的には事実を羅列しているという内容ですので、ここは特に問題なさそうです。しかし、専門家である医師の方がみれば、間違いがある可能性は捨てきれません。 

 

 

⑤『意味があるかしら?(どこかおかしくないか?)』

これについても、このインタビューフォームのフォーマット自体が企業ではなく、日本病院薬剤師会で作られていることから、問題は特になさそうです。 

 

ボアラ軟膏副作用発症率の信憑性

 以上、データのウソを見破る5つのカギを元に検証してきましたが、皆様のご理解通り、カギ1、2、3の理由から、『ボアラ軟膏における副作用の発症率は1%未満』というデータは、信ぴょう性が限りなく薄い、企業側が作為的に作り上げたデータである可能性が非常に高いと結論づけることができます。 

 

 そして、このインタビューフォームを見ていると、この他にも色々と興味深い内容を見つけることができます。一つは、脱ステ支持の医師に対して悪意を持って噛み付く医師が多用する、『ステロイド外用剤が皮膚や体内に蓄積することはない』という見解です。これらの医師は、 

 

「ステロイド外用剤は皮膚に塗布したのちに1〜2時間すると、その8割程度が皮膚に吸収され効果を発揮し、種類にもよりますが2〜3日かけて皮膚から血液中に徐々に移行して消失すると考えられています(大木皮膚科HPより抜粋)」 

 

と言っています。しかし、ボアラ、ザルックス軟膏のインタビューフォームにある動物実験の結果にはこのようにあります。 

 

本剤をラットの正常皮膚に塗布した結果、皮膚中へ速やかに移行し、比較的長く皮膚中に存在した」 

「本剤を正常皮膚ラットに単回経皮投与したとき、排泄は主に糞中に認められ、塗布後144時間までの尿糞中総排泄率は雄11・04%(尿1・15%、糞9・89%)、雌8・01%(尿1・91%、糞6・10%)であった」 

 

まず、『比較的長く皮膚中に存在した』という表記が引っかかります。なぜ、具体的な日数を表記しなかったのか。仮に2〜3日で消失するのであれば、その日数を明記すれば良いのになぜそうしなかったのか。明記すると企業側に都合が悪いほど、『長期的』に皮膚に残っていたと考えざるを得ません 

 

そして代謝についての結果ですが、これには少し驚きと恐怖を感じました。なぜなら、たった1回投与しただけにも関わらず、1週間たっても雄は89%、雌は92%も薬が体外に排出されることなく、体内に残っているというのです。もちろん、汗などからも体外に排出されているでしょうから、先の数字がそのまま体内に残るということはないでしょうが、私のように長期間塗り続けている患者の体内には、一体どれほど薬が蓄積されているのかを考えると恐怖を感じました。そんな私のような難治化アトピーと関連するであろう項目『反復投与毒性試験』の『慢性毒性』の欄にはこのように表記されています。 

 

「ラットにデキサメタゾン吉草酸エステル(ボアラ、ザルックスの成分)として最大0・06mg/kgを26週間連続投与した結果、体重増加抑制、副腎の委縮など、副腎皮質ホルモン剤に共通して認められるもの以外に特異な変化は認められなかった。これらの症状は、投与中止後回復した」 

 

 これを見てもお分かりになるとおり、慢性的な毒性を調べると言ってもたった半年程度の実験しか行われていないということがわかります。私を含めた難治化アトピー患者の方からしたら、 

 

「たった半年って、こちとら何年間塗り続けてると思ってんだ!」 

 

とお怒りになるかもしれません。しかし、これに関しては、製薬会社側を一方的に責めるわけにはいかないと感じました。なぜなら、製薬会社側の注意事項には『大量または長期にわたる広範囲の使用には副作用が生じる』つまり、長期的な使用はオススメできないと表面上はっきり言っているのです。 

ではなぜ、私のように10年以上薬を処方され続けた、難治化アトピー患者がこんなにも増えてしまったのでしょうか。消去法でいうと、治療ガイドラインを作成する日本皮膚科学会になんらかの意図や問題があると考えざるを得ないでしょう。 

 

これまでの流れ/時系列

ここまで読まれてきていかがでしょうか。本書は、基本的には私が通った思考の流れを時系列で書いています。ここで一度おさらいして見ましょう。 

 

1.薬を塗り続けることに、なんの疑いも持たなくなっていた 

            ↓ 

2.子供が生まれ、ステロイドをベタベタに塗った腕で子供を抱いても平気なのだろうか?という疑問が生まれ、思考停止状態から目覚めた 

             ↓ 

3.ステロイドとステロイド外用剤がもたらす副作用について、徹底的に調べる 

             ↓ 

4.家族と自分のために『脱ステ』を決心、徐々に実行に移す 

 

といった流れで、ここまでで③の項目を終えたところです。ここまで読んでいただいた読者の皆様には、ステロイドとステロイド外用剤がもたらす副作用について、しっかりとご理解いただけたかと思います。 

 

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