第3章

脱ステのススメ 13 第3章 〜本当に副作用はないに等しいのか?〜

ステロイド剤の副作用はないに等しいのか?

それでは、第2章の内容と見識を元に、製薬会社が発表するステロイド外用剤仕様に対する副作用の発症率データについて検証していきましょう。私が使用し続けたボアラ軟膏というステロイド外用剤使用における副作用の発症率は1%未満だという、製薬会社の統計データは先にあげた通りです。 

では、本当にそのデータは信用できるものなのでしょうか。日本製薬工業協会によりますと、医療技術の進歩や臨床データの中から、新薬候補物質の探索や合成が試みられるのですが、それらの候補化合物が新薬になる確率は10837分の1で、新薬として世に出るまでの開発期間は9〜17年、開発費用は200億〜300億円にものぼるとされています 

 

 

もしあなたが製薬会社の社長なら、この完成した新薬について、どのように消費者に訴えるでしょうか。膨大な年月と費用をかけ、ようやく完成した新薬です。これからバリバリ売りに売りまくって、資金を回収し、利益を生み出してもらわなければいけません。ここで、製薬会社にとって重要なポイントは消費者の視点に立つことです。消費者がどのような薬を欲しがっているのかがわからなければ、薬が売れるはずもありません。では、消費者である患者はどのような薬を求めているのでしょうか。それはもちろん、 

 

『病状の回復に効果があり、副作用がなく、しかも安い』 

 

ということになります。ステロイド外用剤の効果に関していえば、ランクが強いものをしっかりと塗れば、一時的に症状を抑えることができる確率はかなり高い問題は副作用です。薬の使用による副作用の危険性を明記しなければならないということは、規約により決まっており、それを外すことはできませんであるならば、薬の売上をあげるためには、いかに副作用の発症率が少ないかを消費者に示すことが重要なポイントになることは間違いありません。だとすれば、製薬会社が発表しているデータは、企業側に偏ったデータを作成している可能性があり、そのデータの信憑性を確かめる必要があります。 

 

ボアラ軟膏について

データを検証する

 では、ここで改めて、ボアラ軟膏についての副作用に関するデータを見て見ましょう。 

 

投与症例9840例中、65例(0・66%)に副作用が認められ、主なものは毛嚢炎・せつ17件(0・17%)、ざ瘡様疹10件(0・10%)、そう痒感9件(0・09%)、刺激感8件(0・08%)等であった。(再審査結果) 

 

 私がこのデータを見て、まず最初に感じたのが、総投与症例数の多さと『再審査結果』という表記です。 

 

「この総投与症例数ってのは、そもそも9840人か9840回なのかどっちんだろう。このどちらかによって結果は変わるだろうし、どちらにしてもこの人数(あるいは回数)のデータを取ろうとしたら、一つの病院じゃ難しいだろう。とすると、いくつかの病院が合わさった場合、データが偏る可能性(副作用の発症率が低いというデータを集めることに協力的な病院および医師同士が結託する可能性)が高そうだ。しかも、再審査結果ということは、以前の結果の副作用発症数はもっと高かっただろうなぁ。いや、他にも気になることがたくさんあるぞ」 

 

といった感じです。

ここで登場するのが、第2章で挙げた『統計の嘘を見破る5つのカギ』です。再度確認してみましょう。 

 

統計のウソを見破る5つのカギ 

1.誰がそう言っているのか?(統計の出所に注意) 

2.どういう方法でわかったのか?(調査方法に注意) 

3.足りないデータはないか?(隠されている資料に注意) 

4.言っている事が違ってやしないか?(問題のすり替えに注意) 

5.意味があるかしら?(どこかおかしくないか?) 

 

これに沿って、一つずつ確認していきたいと思います。 

 

①誰がそう言っているのか?(統計の出所に注意)

まずは1つ目の『誰がそう言っているのか(統計の出所に注意)』です。これについては、製造元のマルホ株式会社が作成するインタビューフォームにて確認しました。インタビューフォームとは、医薬品の添付文書では不十分な情報を補うために企業から提供される総合的な情報提供書で、日本病院薬剤師会が要領を策定し、製薬会社が作成、配布するものです。製品の薬学的特徴、製剤の安定性、注射剤の溶解後の安定性、使用上の注意の設定理由、毒性などと言った薬剤師が必要とする医薬品情報のうち、添付文書では十分に得られない情報が記載されています。インターネットにて誰でも閲覧可能ですので、興味のある方は見ていただければと思います。 

この副作用に関するデータの出所ですが、結論から言えば『わからない』です。インタビューフォームにも先に挙げた投与症例9840例中、65例に副作用が見られる】という結果が載っているだけで、出所について何一つ記載がないのです。だとすれば、過去の検証結果の文献データを引用するのがどの業界においても当然なのですが、なんとそれもありませんこれはどういうことかというと、『どこかの病院でこれだけの臨床データをとっています』と言っているのと同様ですこれでは、それを信じろと言われても難しいということはいうまでもありません。 

 

②どういう方法でわかったのか?(調査方法に注意)

2つ目のカギ『どういう方法でわかったのか(調査方法に注意)』ですが、これの答えも『わかりません』です。これについても一切の記載がありませんでした。副作用の調査ということで考えると、『どのような症状の患者』に『どれくらいの量』を『どれくらいの期間』与えたかが重要になります。仮に、このデータの調査方法が、対象の病院で診療を受ける患者に対して行われる以下のようなアンケートであると仮定します。 

 

1.当院で処方された外用薬の効果について 

・症状が良くなった 

・症状が悪くなった 

・変わらない 

 

2.当院で処方された外用薬による副作用について 

・副作用がある 

・副作用はない 

・わからない 

 

このようなアンケートである場合、対象者によって回答は全く変わることが容易に想像できます例えば、ステロイド外用剤を日常生活で使うことがほぼ無い、あるいは初めてという患者であれば、効果に対して『症状が良くなった』と回答する確率がかなり高くなりますし、同じく副作用に対しても、塗る期間が数週間や数ヶ月程度では、『副作用はない』あるいは『わからない』に回答が集中するでしょう。しかし、私のように10年以上ステロイド外用剤を塗り続け、それなしには日常生活を送ることが難しいという難治化アトピー患者の人であれば、それを塗ることなしに今の肌の状態を保てないことから、ほとんどの人が『変わらない』あるいは『良くなった』と回答するでしょう。そして副作用に関しては、前者とは全く反対である『副作用がある』と多くの患者が答えるでしょう。しかも副作用に関しては、アンケートで患者が『副作用がある』と感じていても、診療する医者自身が『それはステロイド外用剤使用に対する副作用ではない』と診断する恐れもあります。

このように、調査方法が明記されていないことからも『副作用の発症率が1%を下回る』いう、製薬会社にとって都合のいいデータ結果を作り出すために意識的かつ作為的に導かれた可能性が高い調査結果と言うことができるでしょう 

 

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