なぜ『脱ステ体験記』が多いのだろうか?
ここまで、『なぜ脱ステを推奨する病院や医師がこんなに少ないのか』という理由を検証してきたのですが、当然のように日本の9割以上の皮膚科の医師はそれらの事実を無視して、以下のように言うでしょう。
「脱ステを推奨する病院が少ないのは、アトピー治療にはステロイドが必要だって普通の医師なら誰だってわかるからだよ。」
これに対する私の見解は、
「2割正解で、8割が間違い」
です。私は何も、ステロイド外用剤を全否定するわけではありません。病気で苦しむ人たちを救うために、先人たちが研究及び努力を尽くし、進歩し続けてきた医療や医薬を否定できるはずがありません。
現に私は高校3年生の時、外見的にも精神的にも本当にアトピーで苦しんでいた頃、一時的とはいえ、ステロイドに救われたことは事実です。例えば、症状が出るのが1〜2ヶ月に一度くらいで、その時ステロイドランクが中程度の薬を塗ればなんの問題もないというぐらいの症状であれば、使用しても良いのではないかと個人的には思います。
問題は、やはり大量、特に長期間にわたり塗り続けることだと思います。経験上、そしてこれまで本書で記してきた事実上、依存状態に陥ること、副作用があることは疑いようがありません。私のような難治化アトピーの方は大半の方がそのように感じているでしょうし、だからこそ脱ステの体験記がこれほどネット上に溢れているのです。
脱ステ体験者が伝えたいこと
では、なぜアトピー患者は自分の辛い脱ステの記録を、中には写真を載せてまでネットで公表するのでしょうか。私が数多くの脱ステ体験記に触れ、導き出した答えは一つです。
難治化アトピーに苦しむ全ての人がステロイド依存から抜け出せるよう、共に苦しみを分かち合い、困難を乗り越え、ステロイド依存、そしてアトピー症状から脱却し、幸せな人生を送って欲しいからです。
脱ステロイド、ステロイド依存に対する情報は、これまで述べた点からネットでさえ専門医の意見を見つけることが難しいですし、否定的な発言の方が圧倒的に多い。だからこそ、身を以て学んだ経験、知識、情報を共有し、同じように苦しんでいる人と手を取り合いながらアトピーを克服したい、自身の経験が少しでも役に立てばとの思いで記事を綴っている。と私は感じました。
勇気と愛がなくてはできない、本当に素晴らしい行動だと思います。
脱ステ体験者の共通項
ネットで脱ステに関するページを検証した結果、いくつかの共通する事実、信ぴょう性があると感じた項目を以下にまとめます。
1.ステロイドのランクが強く、利用歴が長いほど、脱ステが完了する期間が長く、リバウンドによる症状も激しく、辛いものとなる
2.リバウンド(離脱症状)は何度も起こるが、一番はじめのリバウンドが一番キツく、2回目、3回目と回数を経るに連れて、徐々に症状は軽くなっていく。
3.リバウンドの症状には段階があり、『汁が出る時期』→『強い乾燥の時期』→『皮膚の粉が落ちる(落屑)時期』を繰り返す。
4.落屑は初期は大きなものだが、時期を経るにつれ空気中に舞うほど細かくなる
5.痒いときは、患部を保冷剤などで冷やすと落ち着く
以上5点です。そして、これ以外で最も重要だと私が感じたのが次の1点です。
「脱ステを自分の判断で無理に行うと、リバウンドの激しさや免疫力の低下により感染症にかかったりと継続が困難になりやすいため、脱ステを推奨する医師に診てもらいながら実行するのがベスト」
というものです。確かに数々の体験記を見ていると、そのリバウンドの症状は相当なもので、覚悟が必要だということは感じられました。
「脱ステの専門医かぁ。そんな希少な先生大阪におるんかなぁ」
といろいろ調べていた矢先、父親からこんな情報が舞い込んできました。
「俺が高校んときのハンドボール部の恐ろしい先輩が、脱ステロイドで結構有名な先生らしいで。今どこの病院おるって言ってたかなぁ、堺(大阪)の人やねんけど」
「へ〜、そうなんや。まぁそこまでわかってたら自分で調べてみるわ」
と調べてみたのですが、堺の脱ステ病院で調べても、それらしいものは小児科しか出てこない。しかし、どうも大阪府松原市にある阪南中央病院に、脱ステを専門とする佐藤健二なる名医がいるらしいとの情報を手に入れた私は、2016年9月、初めて阪南中央病院を訪れることとなりました。