第5章

脱ステのススメ 17 ※重要 第5章 〜阪南中央病院/脱ステ治療の流れ〜

阪南中央病院

 

阪南中央病院は、大阪府松原市にあり、病床数約200床1973年の病院創立以来『病気の背景を考える医療』『地域に根付いた医療』『患者との双方向コミュニケーションを重視する医療』等、人権を尊重し、医療に恵まれない方々に対し、心のこもった総合的な医療支援を重視する総合病院です。私は2016年9月より阪南中央病院に通いだし、3年ほど通院したのですが、こういった医療に対する理念(企業でいう経営理念)を言葉だけでなく、スタッフにしっかりと浸透させ、それが実践できている素晴らしい病院であると、スタッフと接したり、病院に足を運ぶ患者さんたちとの触れ合いの中でそう実感しました。経営理念を標榜するのは簡単なことですが、実際にそれをスタッフにしっかりと落とし込み、実践することがいかに難しく、重要であるかを職業上理解している私は、それが実践できている病院という法人組織に対して、非常に大きな好感を抱きました 

 

 阪南中央病院での初診にあたり、診療の質を下げることなく待ち時間を短縮させるため、初診の患者様には以下の内容を記入したものを用意していただきたいとの案内がHPに記載されていました。 

 

・時期(例:3歳〜6歳までなど) 

・皮疹の場所(例:顔、首、肩、肘の内側、膝の裏側など) 

・治療内容(例:ステロイド、プロトピック、保湿剤などの種類と1日の外用回数など) 

・その他、特に伝えたいことなど 

 

の4点です。ここで私はまた1つ引っかかりました。 

 

「ステロイドの使用歴だけでなく、プロトピックについても必要なん?」 

 

というものです。しかし、私はプロトピックを数回しか使用したことがなかったし、この段階では特に気にかけていませんでした。 

 

阪南中央病院皮膚科部長 佐藤健二医師

初診当日、病院には開院してから15分とたたないうちに到着したのですが、それでも診察まで2時間以上待つこととなりました。時間指定の予約ができず、早いもの順であるにも関わらずです。改めてすごい人気なんだと実感しました。そして、やっと自分の順番となり、診察室に呼ばれました。忘れもしない佐藤先生との初対面です。 

 

 

「失礼します。よろしくお願いします」 

「はい、お願いします。そちらへどうぞ。井崎さん、、、井崎さんは、今ご職業は何をなさってるんですか?」 

「米菓の製造、卸をやっている会社で働いています」 

「米菓っていうと、おかきのことですか?」 

「はい。そうです」 

「場所を聞いてもいいですか?」 

「はい。住所は松原市大堀で、阪神高速道路の大堀出口を降りてすぐ、大和川沿いに工場があります 

「あの阪和道を和歌山方面に向かってると、『いざきのおかき』って看板が見える工場ですよね?」 

「あ、そうです」 

「あなたのお父さん、高校はどこの高校ですか?」 

「え〜っと、高津高校です」 

「お父さん、私の後輩ですね。部活ですごく厳しく指導した覚えがあります」 

「・・・・・えぇーー!? 

 

本当に驚きました。阪南中央病院やたんかい! 

 

「あ、いや、先生がそうだったですか!父から高校の時の部活の恐ろしい先輩が脱ステ医をやってるって話は聞いてはいました。でも堺のほうやって聞いてたんで、調べても小児科しかでてこなくて」 

「それは私の家内がやっている方ですね」 

「・・・・・。えぇーー!?」 

 

といった流れです。世の中狭いというかなんというか、でも結果的には良かった。こんな感じのスタートでした。そして、今後の治療の方法について先生から言われたことは、大きく分けて以下の2つ。『ステロイドのめ方』『最終的には保湿剤もやめる』ということでした。 

 

ステロイド外用剤のやめ方

まず、『ステロイド外用剤のやめ方』についてですが選択肢は3つ。 

 

1.ステロイド外用剤も保湿剤も一気に中止する。 

2.ステロイド外用剤は一気に中止し、保湿剤は徐々に減らしていく。 

3.ステロイド外用剤も保湿剤も徐々に減らしていく。 

 

この3つです。この際、離脱症状が一番顕著に現れるがで、一番軽いのが③。普通に仕事をしながら通院で脱ステを行うには③が最も現実的とのことでした。 

 

しかし、どうしても症状がひどくなって減らせないという状況になれば、入院での離脱となります。もし、仕事を長期間(私の場合、症状やステロイドの利用歴から考えて40日前後)休めるというのであれば、入院治療を勧めます。入院治療では①の方法を取りますので、結局最終的にゼロにしなければならないということから考えると、入院して一気に離脱する方が、結果的に短期間で離脱することができます」 

 

ということでした。自宅で①の方法を取るケースについても尋ねて見たのですが、もちろん出来なくはないがオススメはできないとのこと。その理由として一番大きなものは、脱ステロイド、脱保湿の際には世間の常識的な治療方法がほとんど通用しないため、医師の詳しい観察と説明、及び悪化要因の除去と適切な対処が必要となるということ。他にも、激しい離脱症状が現れる可能性が非常に高いので、特に営業や接客業、受付などの他人と接する仕事は、肉体的にも精神的にも負荷が大きくなる可能性が非常に高いとのことでした。40日も仕事を休むなんてとても考えられなかった私は、在宅で徐々に減らしていく方法を取ることにしました。 

 

2つ目の『保湿剤(私の場合は、主に首から上に使っていた白色ワセリン)もやめる』ということについては驚きました。なぜなら、白色ワセリンは無害だと考えていたからです。だってそうでしょう?保湿なんて健康な人でさえ誰でもやっていることですし、アトピー患者が肌を乾燥させないようにするなんて常識だと信じていたからです(これに関しては、またもや常識にとらわれ、思考停止状態に陥っていた自分に猛省を促すこととなります)。

これについて佐藤先生は、 

 

あなたのような難治化アトピー患者は、ステロイド依存だけに止まらず、保湿依存症も併発しています。保湿依存というのは、水分が常に、しかも過剰に皮膚表面に存在し続けたことにより、身体及び脳がこの保湿状態にある皮膚こそが当たり前の状態だと認識してしまい、皮膚の代謝過程、皮膚が生まれ変わる過程が保湿ありきのものに変わってしまった状態です。このような保湿依存状態の肌を通常の肌に戻すには、脱保湿によって生じる離脱症状を乗り越える他ありません。あなたは顔の赤みが気になっているとのことですが、その赤みこそが保湿依存から来るもので、脱保湿なしに治ることはありません。そして、脱保湿でも激しい離脱症状が起こることも覚悟しておいてください。ステロイドの影響を受けた皮膚が脱保湿を行うと、長い日数をかけ何度も落屑を繰り返しながら、正常な皮膚へと戻って行きますあなたの場合、もう長い間顔にステロイドは塗っていないようですので、そこまでひどい離脱症状が起こることは考えにくいですが、現在の紅皮症の程度からみて、離脱症状が起こることは避けられないでしょう 

 

という衝撃の事実でした。

 

在宅での治療の流れ

この日に決まった今後の治療方針は、次のようなものとなりました。 

 

1.顔と首以外、全身に使用しているステロイド外用剤を徐々にやめていく。私の場合、薬を塗るのは基本的に入浴直後の1日1回だったので、その時間をちょっとずつ遅らせていく。初めは入浴1時間後、2時間後、3時間後と徐々に遅らせていき、寝る前まで我慢できるようになってきたら、次は翌朝まで我慢するといったようにして、最終的に完全にやめれるようにする。 

2.顔と首に塗っているワセリンに関しては、社会生活に支障をきたさない程度に減らしていく。ステロイドと同じように塗る時間を遅らせながら、同時に塗る場所も減らしていくが、出勤時どうしても気になる部位(私の場合は、特に目の周りと口元)には塗っても構わない。が、できるだけ塗らないよう心がける。 

3.食事制限はなし。バランスの良い食生活を心がけ、皮膚の代謝、再生を助ける良タンパク質(主に肉類)を意識して摂取する。 

4.水分制限をする。水分を多くとると浸出液や皮膚の浮腫を増加させ、皮膚が傷つきやすくなり、また治りにくくなる。人にもよるが、食事以外での水分は1500ml以内におさめる。夕食後以降はなるべく摂取しないのが良い 

5.運動をする。心肺機能の向上なしに、皮膚は強くならない。運動の種類はウォーキング、ランニング、サイクリングなどの有酸素運動がオススメ 

 

以上5点である。

「何か他に質問はありますか?」とのことでしたので、気になっていた2つのことを聞いてみました。

 

ステロイドを塗った肌が幼児に触れても大丈夫か?

1つは『ステロイドを腕に塗った直後、幼児を抱いて直接肌が触れても大丈夫なのか』ということ。2つ目は『プロトピックの利用歴も注視していたが、プロトピックも使わない方がいいのか』という2点です。 

 

まずは1つ目の『乳幼児にステロイドを塗った皮膚が触れても大丈夫か』ということですが、それについてはこうおっしゃいました。 

 

それは触れないに越したことはないので、薬を塗った直後は長袖で接するようにしてください。難治化アトピー性皮膚炎は、なにも長期間に渡り塗り続けた人だけがかかるものではなく、非常に短期間でも依存性を獲得してしまうケースも幼少期ではよく見られます。さらに、幼少期に短期間かつ部分的にステロイド外用剤を使用し、その後長期にわたって使用することがなかった人が、青年期になって再び症状が出たためステロイド外用剤を使用すると、症状が急激に全身に広がり、難治化アトピー性皮膚炎なるという症例もあります。あなたの症例もこれに近いケースと思われます。これは何が問題かというと、これらの事実が『部分的な外用であるにも関わらず、その他の部位にも影響を与えること』、さらには『皮膚が若い頃に受けたステロイドによる刺激を長期間記憶している』という事実を示唆するものだからです 

 

 まさに、その可能性は大いに考え得ると感じざるを得ませんでした。事実私がそうだったからです。私は幼少期、そこまでひどいアトピーを患ってはいませんでしたし、小学校低学年の頃には完治していました。その後10年ほどは全くステロイド外用剤及びワセリンなどの保湿剤も使わない生活を送っていましたが、18歳の時に再び現れた、しかも幼少期とは違う部位に発症した小さな症状に対してステロイド外用剤を使用したのち、全身に、さらに幼少期とは比べ物にならないほどひどい症状が一気に表出したからです。 

このことに関して、説を立証する文献や過去の臨床データはないのですが、私が身をもって体験しているということと、この可能性を否定するデータが存在しないこと、さらに私の使用していたステロイド強度3群のボアラ軟膏の使用は、幼児どころか小児に対してでさえ発達障害の可能性があるという3つの点から考えると、なるべく我が子に触れることは避けなければならないという結論に達しました。 

 

プロトピックも使わない方が良いのか?

そして2つ目のプロトピックについて、佐藤先生は次のように仰いました 

 

 

プロトピック及びネオーラルは、一言でいえば免疫抑制剤で、臓器移植などによる免疫拒絶反応を抑えるために開発されたものをアトピー患者用にカスタマイズしたものですが、皮膚癌や白血病を引き起こすリスクがあります。日本皮膚科学会が、アトピー性皮膚炎はステロイドを塗れば治ると宣伝、実行し続けましたが、それでは治らない人が多くなってきたために出てきたものです。 

しかし、そもそもアトピー性皮膚炎の多くは幼児期までに自然治癒する疾患であり、ステロイドで治りにくくなったアトピー性皮膚炎も、脱ステロイド、脱保湿療法で改善するものなので、わざわざ癌の発生リスクを負ってまで使う必要など全くありません 

プロトピック軟膏は、発売前の動物実験でリンパ腫を多く発症することが示されていました。厚労省は、この問題が解決される前に、プロトピック軟膏を医薬品としての使用許可を出しました。これは、免疫抑制剤の発癌性について人体実験を認めたことと同じことで、到底許されるべきことではありません。私は、プロトピック軟膏は開発されるべきではなかったものだと認識していま 

 

というこれまた驚くべき内容でした。プロトピックに関しては、私自身は数回しか使用していなかったので内容について深く調べていませんでしたが、多くの病院で当たり前の様に処方されている薬品(現に羽曳野医療センターでは初診時に処方された)であるため、プロトピックについてもしっかりと調べなくてはならないと感じました。 

 

「まぁとにかく焦らず、無理せず、徐々にステロイドを減らしていきましょう。私の治療方針や考えていることなど、詳しいことは私が書いた本(〈新版〉患者に学んだ成人型アトピー治療【難治化アトピー皮膚炎の脱ステロイド、脱保湿療法 つげ書房新書】)におおかた書いてありますので、興味があったらそちらも読んで見てください」 

 

《新版》患者に学んだ成人型アトピー治療 難治化アトピー皮膚炎の脱ステロイド、脱保湿療法/佐藤健二著

 

といった内容で、私の初診は終了しました。そうか、佐藤先生が書いている本があるのか。これは失敗した。私は、書籍を出版している先生や経営者の方と直接お会いする機会があるときは、その本を読み、その方の考え方や行動軸を事前に把握することで、会っている時間の会話や質疑応答が充実したものとなる様心がけています。仮に、私が問いかけた質問に対する答えがその方の著書に記載されているものであれば、その質問は貴重な短い時間を無駄にするものであるばかりか、直接お会いしている著者の方に対しても礼節を欠く行為であると考えているからです。診察が終わったその足で先生の著書を購入したことは、いうまでもありません。

 

 

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