最終章

脱ステのススメ 26 最終章 〜脱ステのススメ〜

現医療体制に潰された医師

 

本書は、アトピーで悩み、苦しむ全ての人に向けたものであり、そんな方に対して、脱ステロイド、脱保湿療法を薦めるもの、および選択肢の1つとして真剣に考えていただくためのものです。的確な判断をしていただくために、明るみに出ない、あるいは出せない情報を掘り下げ、それを皆様に伝えることによりご自身で判断する際の材料にしていただければと思い執筆しました。 

 

深谷元継医師の訴え

医療業界の構造的問題、お金や権威を守るために、脱ステ医がバッシングを受ける格好の的になることは先に述べたとおりです。

ステロイド依存をきたしている患者に対して、熱心に治療を続けてきた医師の一人に、深谷元継氏がいます。脱ステロイドに関して情報を集めたことがある方ならば、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。深谷医師は、前国立名古屋病院皮膚科の医師で、業界からの激しいバッシングと、儲からないことはしない、出来ない業界構造から、ステロイド依存に苦しむ患者が深谷医師のもとに集中したことにより心身ともに蝕まれ、業界を去ることを余儀なくされた方です。

現在は、完全予約制の美容外科クリニックをほそぼそと経営していると自身のブログで綴っておられますが、私は、深谷医師のブログを見て、正直、涙が流れるのを止めることができませんでした。ステロイド依存に立ち向かう医師に、どれほどの胆力と技術が要求されるのかが伝わる文章だと思いますので、以下に引用させていただきます。http://www.tclinic.jp/atopy/intro.htm 

 

 

書き残したこと 

 

一年ほど前まで、私は総合病院で、アトピー性皮膚炎を中心としたステロイド依存症に陥った皮膚疾患の患者の離脱を助ける仕事をしてきました。
未開拓の分野で、数多くの患者が全国から集まってきました。症例が蓄積され、十分な説得力を持つと考えられた時点で、まずは患者向けに「ステロイド依存ステロイドをやめたいアトピー性皮膚炎患者のために:つげ書房新社」を1999年に出版し、次いで翌2000年に皮膚科を中心とした医師向けに「アトピー性皮膚炎とステロイド離脱:医歯薬出版」を著しました。

 

ステロイド依存ステロイドをやめたいアトピー性皮膚炎患者のために〜/深谷元継著

 

アトピー性皮膚炎とステロイド離脱/深谷元継著

 

前者は、ステロイド依存に陥り、自分がどんな状況にあるのか判らなくなってしまった患者の道しるべのために、後者は、この皮膚科の抱える不良債権のような問題を、皮膚科医全体で手分けして解決していこうじゃないかという呼びかけのためでした。

前者は、それを手にした一部の患者たちの役にたったようです。それまでは「ステロイド依存」という言葉すらなかったですから後者はあまり奏効しませんでした。
 

これは、非常に私を落胆させました。重症患者のステロイドからの離脱になんとかこぎつけると、それを伝え聞いた新しい患者がまた遠方からやってきて、助けを求める。このしんどい作業が延々と繰り返される。

「脱ステロイド療法」叩きもこたえました。「一部の皮膚科医が『脱ステロイド療法』なる非科学的な療法を提唱するがゆえにステロイドを悪者扱いにするアトピービジネスがはびこる」という論法です。(中略)

患者にとって唯一すがることの出来る医者であるということは、素晴らしい、うらやましいとおっしゃる方もいるでしょう。しかし、それは患者がどのような状況に陥っても臨床医として的確な判断のもと、救命し、軽快治癒方向に持っていけるという大前提があってのことです。ある一定数までの患者であれば、私には十分にそれをこなす能力があります。また、それを実践してきました。

しかし、私個人のcapacityを超えて、患者が救いを求め、共に手分けして治療に当たる仲間も近くに見当たらないとき、多くの患者に頼りにされることは、私自身の心身を蝕んだようです。私は病に倒れました。病気休暇を経て復職してみましたが、限界を感じました。体調のすぐれぬまま、無理を続けて、何かミスを犯すくらいなら、自分自身振り返って、臨床医として誇りを持ったまま引退したほうがいい。そう思って退職しました。

それから一年余りが経ちました。元来の手先の器用さを生かして、完全予約制の美容外科クリニックをほそぼそと経営しています。この仕事なら、時折体調を崩して休診になっても、お客様に迷惑はかかりませんし、少人数を丁寧に診ていても、なんとか食べていけます。時に、昔の患者が友人として訪ねてきます。ちょっとだけ懐かしく、しかし、あの大変だった日々がflash backして、欝になったりもします。

(中略)

退職間際の私は、心身ともに最悪でしたが、脱ステロイドを管理する臨床医としての能力は、研ぎ澄まされていました。(中略)医学は科学ですが、医療、とくに医師は、職人だと思います。「芸」といってもいいです。脱ステロイドに関して、あの頃の自分の芸は、極致でした。

二冊目の、医師向けの本が、あまり反響を呼ばなかったのは、そのためもあったのかもしれません。一生懸命私なりに「科学的」な医学の言葉で書いたつもりですが、職人芸を書物で著すことはしょせん無理があったのかもしれません。

前置きが長くなりました。

上述のように、言葉や写真による情報伝達能力に失望しかけている私ではありますが、一握りの方にでも伝わることを願って、「書き残したこと」をここに記そうと思います。 

 

                      2003年10月2日 深谷元継 

 

 

皮膚科が抱える不良債権問題

 

どうでしょうか。私は、なんとも言えない辛さと憤りの入り混じった気持ちになります。言い得て妙だと感じたのが、ステロイド依存について『皮膚科の抱える不良債権のような問題』だといっている点です。まさにその通りかと思います

深谷医師の呼びかけは、残念ながら業界に届くことはありませんでした。客観的にみれば、約20年前、一人の医師が医療業界というとてつもなく大きな官僚的体制立ち向かったところで、勝ち目はゼロに等しかったのではないかと思います。いま現在でさえ、10〜20%がいいところでしょう。阪南中央病院の佐藤先生は、そんな分の悪い戦いを70歳を超えた今でも最前線で行っています。完全に私の理解の範疇を超えています(笑) 。

 

もうひとつ、深谷医師の心身を蝕む理由となったのが、業界の脱ステ療法バッシング。一言でいうと、『とことん腐っとるな』です。人を助けたいという想いを持って医療を志す医大生に対して、『患者と向き合うな』と教えていると思わざるを得ません

一部の皮膚科医が脱ステロイド療法なる非科学的な療法を提唱するがゆえにステロイドを悪者扱いにするアトピービジネスがはびこる』と言いますが、この文章は矛盾の塊です。脱ステロイド、脱保湿療法がお金にならないというのは、先に記した通りです。患者に嘘を付き、私腹を肥やす輩といっしょくたにして糾弾しています。 

さらに『非科学的な療法』とありますが、ステロイド支持を続けざるを得ない業界構造から、データがそちらに有効なものに偏ることは必然ですし、反対派に自分たちが不利になるデータを渡すことも考えられません。例えば、阪南中央病院にはステロイドには問題があると身を以てわかった人、それを使いたくない人しか来ないですから、その相対的データを集めることも簡単ではないでしょう、というか不可能に近いでしょう。佐藤先生が日本皮膚科学会に所属しているのも、そういった面もあるかと思います。仮に脱ステが効果的だという科学的、統計的データを出したところで、業界がそれを認め、謝罪し、方針を変更するというのは非常に考えにくいですが。 

 

こういった状況から、アトピー治療に対する情報の大半は、未だにステロイド支持、脱ステロイドバッシングです。何度も言いますが、医療(皮膚科)業界が思考停止に陥っているのは明らかです

私には、『非科学的』と一蹴して、なぜその『仮定』に向き合わないのか全く理解できません。科学においても、ビジネスにおいても、問題追求の始まりは「こういう状況ならこうなのではないか?」という仮定から始まります。ステロイドが使われ出してから、成人の難治化アトピー患者が増えているのが明らかであるなら、ステロイドの長期使用と成人の難治化アトピーに関連性があるのではないかと『仮定』して、それを立証するためのデータを集めるということがなぜできないのか。いや、しないのか。そして、それを行う医師たちを徹底して叩き、業界から追い出すのが業界の正義なのか。「そんなものならなくなってしまえ!」というのが本心なのですが、政府含めそれほど簡単なものではないのが難しいところです。 

 

ですので、私にできることといえば、最新のデータや医療情報を客観的かつ冷静に分析し、皆様の判断材料にしていただくということしかありません。最終章では、本当に脱ステロイドは根拠のないものなのかを、様々なデータをもとに検証していきたいと思います。 

 

 

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